高血圧とは
高血圧とは、その名のとおり血圧が慢性的に高い状態を指します。糖尿病や脂質異常症と並び、代表的な生活習慣病の1つです。
この状態を放置してしまうと、動脈硬化が進行し、やがて脳卒中や心筋梗塞といった重大な病気を引き起こすリスクが高まります。
自宅で測定する血圧とクリニックで測定した血圧の違い
「診察室血圧」と「家庭血圧」
医療機関で測定された「診察室血圧」と、自宅など診察室以外で自身が測定した「家庭血圧」に分けられます。
血圧は、運動や身体的な活動、精神的な緊張やストレスによって容易に変動するため、診断する場所によって基準値が設けられています。
一般的には、診察室血圧が130/80mmHg以上、家庭血圧が125/75mmHg以上の場合、高血圧と判断されます。
高血圧管理・治療ガイドライン2025
高血圧管理・治療ガイドライン(2025年改訂)の基準によれば、年齢にかかわらず診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満を目標とすることが示されています。
なお、2019年版では75歳以上と未満で目標値が異なっていましたが、新ガイドラインでは統一されました。高齢の方や合併症を持つ方については、無理のない降圧を目指すことが推奨されています。
血圧の働き
血圧とは、血液が血管の壁にかける圧力のことをいいます。この圧力によって、酸素や栄養素を含んだ血液が心臓から全身に送られます。
最高血圧と最低血圧の違い
血圧は、以下の2つの値によって表されます。
- 最高血圧(収縮期血圧):心臓の筋肉が収縮して血液を押し出すときの圧力
- 最低血圧(拡張期血圧):心臓が拡張し、筋肉が最も緩んでいるときの圧力
一般的に「上が○○、下が××」という表現をしますが、「上」は最高血圧、「下」は最低血圧を意味しています。
高血圧症の症状
高血圧は、糖尿病や脂質異常症と同じく、初期にはほとんど自覚症状が現れません。そのため、症状がないまま放置されやすい病気の1つです。
しかし、治療をせずに高血圧の状態が長期間続くと、動脈硬化が進行し、心臓や血管に大きな負担がかかるようになり、息切れや動悸、手足のむくみなどの症状が出てくることがあります。
50歳前後の女性に多い?更年期に増える高血圧とは
女性は、女性ホルモン「エストロゲン」の働きによって、男性に比べて若年期は動脈硬化の進行が遅く、高血圧になりにくいとされています。
しかし、50歳前後で閉経を迎えるとエストロゲンの分泌が急激に減少し、それに伴い血圧が上がりやすくなります。これにより、更年期以降の女性では高血圧のリスクが一気に高まるため、「女性だから安心」と油断せず、定期的な血圧測定と早期対応が重要です。
隠れ高血圧がある可能性も!ご注意ください
自宅や病院での血圧測定では正常範囲内であっても、仕事中や強いストレスを受けている場面で血圧が上昇しているケースがあります。このような状態を「隠れ高血圧(仮面高血圧)」といいます。
何が血圧の原因?2種類の高血圧
本能性高血圧症
高血圧のうち約90%以上を占めるのがこのタイプで、明確な病気が原因ではなく、生活習慣や体質の影響によって発症すると考えられています。
リスク要因
- 肥満
- 喫煙
- 塩分の過剰摂取
- 野菜、果物の摂取不足
- 暴飲暴食
- 運動不足
- ストレス
- 自律神経の乱れ
二次性高血圧症
病気や薬剤の副作用が原因で起こる高血圧は「二次性高血圧症」と呼ばれます。以下のような病気が関与しているケースがあります。
- 腎臓の病気
- 原発性アルドステロン症
- 褐色細胞腫
- クッシング症候群
高血圧症が引き起こす病気
高血圧は、血管に常に強い圧力がかかっている状態が続くため、全身の血管や臓器に負担をかけ、様々な病気の原因になります。以下に代表的な病気を紹介します。
動脈硬化
血管の壁が厚く硬くなり、弾力性を失う状態です。この変化により血液の流れが悪くなり、血管が詰まりやすくなったり、破れやすくなったりします。放置すると脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まる重大な病態です。
脳卒中・心筋梗塞
動脈硬化が進むと、脳や心臓の血管が詰まりやすくなり、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞といった命に関わる重篤な病気に繋がります。
心不全
心臓が血液をうまく送り出せなくなる状態です。息切れ・動悸・倦怠感などの症状が現れ、重症化すると生命に関わる場合もあります。高血圧による心臓の負荷が、心不全の一因になります。
腎不全
腎臓の細かな血管が高血圧によりダメージを受け、腎機能が正常の30%以下に低下した状態を腎不全といいます。進行すると、人工透析が必要になるケースもあります。
その他
大動脈瘤や大動脈解離、眼底出血などの原因となることもあります。
血圧測定の習慣づけが大切です!
高血圧管理・治療ガイドライン(2025年改訂)では、ご自宅での血圧測定の習慣化が推奨されています。高血圧と診断された方や予防を目的とする方は、血圧計を用意し、毎日決まった時間に測定することが大切です。
血圧測定する時のポイント
より正確な測定結果を得るために、次の点に注意しましょう。
半袖または袖の生地が薄い服で
血圧計のカフ(腕帯)は、肌に密着させて測ることが基本です。半袖または袖の薄い服で測定しましょう。
毎日、朝と夜の2度測定
起床後と就寝前の2回が理想的です。血圧は身体的活動やストレスによって変動するため、安静時に決まったタイミングで測定することが重要です。
椅子に座って背筋を伸ばして測定する
椅子に座り、背筋を伸ばしてリラックスしながら、心臓の高さで腕帯を巻いて測定します。
測定直前の深呼吸
緊張していると数値が高く出やすいため、測定前に深呼吸して心を落ち着かせてから行いましょう。
2回1セットで
1回の測定では誤差が出ることもあるため、連続で2回測定し、平均値をとるのが理想的です。朝・夜それぞれ2回ずつ、1日合計4回の測定が基本です。
高血圧の治療
高血圧の治療では、まず生活習慣の見直しが基本となります。運動療法や食事療法で効果が不十分な場合には、医師と相談のうえで薬物療法を組み合わせていくこともあります。
食事・運動療法で生活習慣の改善
塩分摂取量の制限
日本人は、世界的に見ても塩分摂取量が多い傾向にあります。血圧を下げるためには、1日あたり6g未満の塩分摂取が目安とされています。
外食が多い方は、できるだけ自炊に切り替えるのがお勧めです。減塩の工夫としては、香辛料・出汁・トマト・アミノ酸などのうま味成分を上手に使うことで、塩分を抑えながら美味しく仕上げることができます。
栄養バランスの見直し
野菜や果物を中心に、多様な食品をバランス良く摂ることが大切です。お酒の摂取は控えめにし、ビールなら1日500mL、日本酒なら1合程度までに留めましょう。可能であれば禁酒が理想的です。
適度な運動・肥満の予防
週に3回以上、30分程度の軽い有酸素運動(ウォーキング・ジョギング・水泳など)を行うことで、血圧の改善と体重管理に効果があります。運動習慣のない方は、無理のない範囲から始めることが大切です。
体重管理を行う前に、まずはご自身の適正体重(標準体重)を知っておきましょう。「標準」「肥満」「低体重」の区分は、BMI(体格指数)で把握できます。
肥満あるいは低体重の場合、生活習慣病やその他の病気のリスクが上昇します。
体格指数(BMI)=体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}
| 標準体重BMI | 22 |
|---|---|
| 肥満症BMI | 25以上 |
| 低体重BMI | 18.5以下 |
禁煙
タバコに含まれる成分は、血管を収縮させて高血圧を悪化させる要因となります。禁煙は高血圧の改善だけでなく、がん・呼吸器疾患・その他生活習慣病の予防にも有効です。
寝る姿勢は「横向き」がお勧め
高血圧の場合、睡眠時無呼吸症候群を合併しているケースが少なくありません。気道の圧迫を避けるために、仰向けよりも横向きで寝る姿勢が推奨されます。当院では睡眠時無呼吸症候群の診断・治療にも対応しているので、お気軽にご相談ください。
薬物療法
主に以下のような薬剤が使われます。
| 利尿剤 | 尿量を増やして血液の量を減らし、血圧を下げます。 |
|---|---|
| 血管拡張剤 | 血管を広げて、血流をスムーズにし、血圧を下げます。 |
| 神経遮断剤 | 自律神経の過剰な刺激を抑え、血管の収縮を防ぎます。 |
| レニン・アンギオテンシン系薬 | 血圧を調整するホルモンの働きを抑制して、循環血液量をコントロールします。 |